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礼の最高の形態は愛である。

日本人の美しき礼儀の良さは、外国人旅行者の誰もが認めるところである。
だが「品格のよさ」を損なう恐れがあるがために行われるのであれば、
それは貧弱な徳といわねばならない。なぜなら礼は、他を思いやる心が、
外へ表れたものでなければならないからだ――。
( 武士道 新渡戸稲造著 第六章「礼 ― 仁・義を型として表す」より)

昨今、欧米やヨーロッパで日本ブームが到来している。山や河、海や空など、情緒心溢れる日本の四季の奥深さを見事に表現し、万物を意識して彩られた着物の柄は、もはや日本人独自の芸術として広く世界で認められている。「道(みち)」と名の付く代表的な日本の数々の伝統。草木や花を人間と同じ命のあるものとして見つめ、その美しさを花瓶の上で表現する「華道」や、精神を集中させ心の内面を書体によって表現することを目的とした「書道」などが代表的なものとして挙げられるだろう。中でも、茶室や庭などの赴きや空間を楽しみ、茶道具などの工芸の上に彩られた懐石料理や和菓子などを味わい、客人をもてなすための点前作法(てまえさほう)などが融合し総合的な伝統芸術とされている「茶道」の人気は、ひときわ欧米やヨーロッパで目立っている。これら自然や人へ対しての繊細な感受性を源泉とする美的情緒こそが、我々日本人の核となり世界に例を見ない芸術を形成しているのではないのだろうか。

その日本芸術の根源にあるのが礼法である。礼法とは、相手を大切に想う心やその場に対する気配り、またそれらをどう美しく形に表現し示していけるかなどを基本としている。人と人とが触れ合うときに生まれる心の在り方をいかに美しくもてなすか。まさにそれこそが、世界が尊敬する我々日本人の感覚であり価値観の出発点ではないだろうか。
礼法は作法とも深く関わりを持っている。大きく分類わけすると、冠婚葬祭などの儀式的なものと、朝起きてから寝るまでの日常生活に必要なものとがあり、人を敬いながら周囲の人やその場との調和を図ることが目的とされている。これらの礼法や作法こそが、我々日本人が日本人であるための大切な何かを静かに教えてくれているような気がして已まない。
しかし現代社会においては多くの者がそのことを忘れ、無思想に生きている。至る所にモノが溢れ、街の商店街はシャッター通りとなり、ネットなどではまるでデタラメな数字が波打っている。物質的に豊かになると人の心が貧しくなるそうだが、それでも尚その動きを已めようとはしない。何故いま日本人は堕ちてしまったのか。耳を澄ませば諸外国から低評されている声が聞こえてくる。暴落寸前のアメリカと暴動の激化が予想される中国との狭間で、日本は全世界から目を注がれている。しかし我々はこの現実をどう受け止めればよいのだろうか。礼法や作法というのは、例えほとんどの人が気に留めないものであっても、知っている人が見ればすぐにわかるものだ。その人の育ち方から教養人格までもが浮き彫りとなり行動へと現れてくるのが礼法であり作法である。だからこそ、深い思考性と高い価値観を持って更に見識を広め、その中から学び、日本人らしく生きたいと願わずにはいられない。
自然に対しての敬意と人へ対して配慮。そして自らは強く美しく生きること――。我々国民ひとりひとりが自己責任の下、国家を背負う者として主体性を持ち行動に移さねばならない。だからそのための原点回帰を今日から始めよう。日本人であることに感謝し、礼儀と作法のある美しい挨拶で、世界に誇れる文化を共に創造していこう。